研究会日程

4回研究会(2025/03/24
佐野泰之氏(高知大学)
学際性の地図を描く」

日時:2025年3月24日(月)14:00-17:00

場所:国立情報学研究所 神田サテライトラボ&Zoomミーティング

発表者:佐野泰之氏(高知大学)

発表タイトル:「学際性」の地図を描く
発表概要:「学際的」(interdisciplinary)という言葉は、1920年代半ばのアメリカで社会科学における分野横断的な共同研究を名指すために生み出されたと言われていますが、今日ではさまざまな分野、さらには研究のみならず教育の文脈などでも用いられています。しかし、このように「学際的」――この言葉も新味を失ったのか、最近では「異分野融合」や「共創」や「トランスディシプリナリー」といった表現も見られるようになりましたが――と称される活動が無数に行われ、それらの活動を踏まえて学際的研究・教育の意義や方法が盛んに論じられているにもかかわらず、私たちは果たして学際性について何か共通の知見と呼べるようなものを持っているでしょうか? むしろ、各々に孤立した学際的活動の実践者たちが、互いに参照し合うこともないまま「私(たち)にとっての学際」を語っている、というのが現状ではないでしょうか。本発表では、「学際性」概念の歴史や先行研究をサーヴェイしながら、学際性をめぐる言説が置かれたこのような状況を乗り越える方途を探りたいと思います。

3回研究会「ベクトル・言葉・意味」(2025/03/04)
横井祥氏(国立国語研究所
確率的なオウムにできることまたそれがなぜできるのかについて」
栗田和宏氏(名古屋大学
「パターンマイニング技術を用いた類似ベクトルマイニングに向けて」

日時:2025年3月04日(月)13:00-17:00

場所:国立情報学研究所 神田サテライトラボ&Zoomミーティング

発表者①:横井祥氏(国立国語研究所

発表タイトル①:「確率的なオウム」にできること,またそれがなぜできるのかについて

発表概要①:巨大データに潜むパターンを計算機で処理する技術が著しく発展したことをきっかけに、人間の言葉を自在に「読み」また「書く」ことのできる人工知能システムが次々と登場しています。これらのシステムは一体どのような仕組みで動いており、また人間とはどのような点で異なるのでしょうか。本講演では、できるだけ神秘的な側面には立ち入らずに、数理と技術で説明がつく範囲で大規模言語モデルの能力とその機序を、できるだけ直感的に説明したいと思います。また、これらの数理や技術を深めていった先で、ヒトの言語や知性について何がわかり得るのか、また何がわかり得ないのかについて議論できればと思います。

発表者②:栗田和宏氏(名古屋大学

発表タイトル②:パターンマイニング技術を用いた類似ベクトルマイニングに向けて

発表概要②:昨今の LLM の発展は人々の生活に変化をもたらしている。私自身、LaTexのコーディングや英語のメールのやり取りに LLM を用いており、以前と比べ、これらの作業は非常に楽になった。これほどまでに便利なツールが出てきたため、LLM などの AI ツールの出力が、現実として人間の意思決定に影響を与えるようになっており、AI の出力結果が差別的だとして問題になったこともある。そのため、AI の出力結果に根拠や説明が求められる場合が増えたが、何らかの「根拠」を出力されたところで、それが人間にとって理解や納得できるかは別の問題である。そのため、複数の根拠らしき仮説から納得できる仮説を探す必要がある。この仮説の生成というタスクは古くからデータマイニングやパターンマイニング分野で研究されており、アイテム集合や、グラフ、系列から頻出するパターンを発見する技術は1980年代から様々な研究がある。しかし、私の知る限り、2015年以降これらのデータマイニングやパターンマイニングの研究は下火になっているように感じる。特に、自然言語処理分野では単語をベクトル化し、そのベクトルの中から似たベクトルは似た意味を持つとみなすため、似た単語や似ていない単語のマイニングは扱いやすい問題のように見える。そこで、本講演では、データマイニング分野の古典的な問題である相関ルール分析や頻出アイテム集合マイニングといった理論的に扱いやすい問題を幾つか紹介しつつ、聴講者のみなさまと興味深いベクトルのマイニングについて議論を行いたい。

第2回研究会(2025/01/22)
岡田進之介氏(東京大学大学院)
フィクション鑑賞における感情喚起の研究―英米圏の現代美学の観点から

日時:2025年1月22日(水)13:00-16:00

場所:国立情報学研究所 神田サテライトラボ&Zoomミーティング

発表者:岡田進之介氏(東京大学大学院)

発表タイトル:フィクション鑑賞における感情喚起の研究―英米圏の現代美学の観点から

発表概要:私たちは映画や小説、演劇などのフィクション作品を鑑賞する中で、感情を喚起されることがある。つまり恐ろしいモンスターに悲鳴を上げたり、主人公の勝利に快哉を上げたり、あるいは悪役の悪だくみに怒りを感じたりすることがあるのだ。そしてそのような感情喚起は、作品鑑賞において重要な地位を占めていると言える。発表者はそのようなフィクション鑑賞による感情喚起を、英米圏の現代美学(分析美学)の観点から研究しており、本発表では研究から二つのトピックを呈示する。一つは感情喚起の機序のモデルである。発表者は作品の形式的特徴による内容に対する注意の誘導こそが、感情喚起において本質的な役割を果たしていると論じる。二つ目はフィクション鑑賞における登場人物に対する「共感」と呼ばれる現象である。日常言語における「共感」概念は不明確で混乱したものだが、ベンス・ナナイの「代理経験」概念を中心に据えることでそれを明確化することができるだろう。

発表スライド

第1回研究会(2024/11/21)
田中琢真氏(滋賀大学)
ニューラル言語モデルによる文藝ジャンルの進化解析和歌を題材として

日時:2024年11月21日(木)13:00-16:00

場所:国立情報学研究所 神田サテライトラボ&Zoomミーティング

発表者:田中琢真氏(滋賀大学)

発表タイトル:ニューラル言語モデルによる文藝ジャンルの進化解析和歌を題材として

発表概要:ヒトは文化の動物である。文化の時間発展、すなわち進化を理解するためには、「文化の内挿・外挿は可能か」「文化の時系列はその逆と区別可能か(時間の矢)」「変化を決定するのは何か」「文化産物の影響度の判定は時代を通じて一貫しているか」などの問いに答える必要がある。これらの問いに答えるため、ニューラル言語モデルBERTに和歌コーパスを学習させ、歌の系統樹を構築した。系統樹の親子関係は本歌取り関係と有意な一致を示した。系統樹は時間逆順の系統樹と区別できた。時代の異なる二つの歌集は内挿できたが、外挿できなかった。系統樹上での子の数は学習する歌の範囲を変えてもある程度一貫していた。勅撰集に選ばれた歌は子が増える傾向があった(マタイ効果)。以上の結果は文化がマタイ効果とランダムウォークで進化することを示している。これらの結果を定性的に再現する自己励起的モデルについても議論する。

本研究の解説(田中氏のHP)

第0回研究会(2024/09/06)
武梦茹氏(九州大学)
「絵画作品のディスクリプションの構造について考える―近代中国に描かれた女性像を手がかりに」

日時:2024年9月6日(金)

場所:国立情報学研究所 神田サテライトラボ

発表者:武梦茹氏(九州大学)

発表タイトル:絵画作品のディスクリプションの構造について考える―近代中国に描かれた女性像を手がかりに

発表概要:絵画作品のディスクリプションとは、モチーフ、表現様式、構図などに着目しながら、絵の中に描かれているイメージを言語化することである。それは、絵の中に直接的に描かれているものを説明することにとどまらず、描かれているものが内包する様々な意味や作者の意図について想像し、自分なりの解釈を組み立てていく作業である。ディスクリプションという行為を通して、私たちが目に見えるイメージから情報を抽出し、取捨選択しながら意味づけをしていくプロセスをいかにして構造化することが可能かについて検討したい。